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意外と重要な雑談の価値|見過ごされがちな生産性の源泉

会議や打ち合わせの場で交わされる「雑談」。

本題から逸れた、たわいも無い話は一見すると時間の無駄のように感じられます。

この習慣、実はチームの生産性や創造性を高める上で極めて重要な役割を担っています。

この事実は、経験則だけではなく、心理学的な知見や、Googleのような大企業の研究(プロジェクト・アリストテレス)によっても裏付けられているのです。

人間は社会的な生き物

人間は、本来社会的な存在であり、他者との繋がりや円滑なコミュニケーションを求める生き物です。

雑談は、そうした人間の本質的なニーズに応える行為です。

仕事上の役割や肩書を超え、互いの趣味や関心事、あるいは些細な日常について語り合うことで、警戒心は和らぎ、親近感が生まれます。

これは心理学で言う「信頼関係(ラポール)の形成」、すなわち信頼関係の構築に他なりません。

温かな人間関係は、コミュニケーションを円滑にし、時に張り詰めた会議の場の緊張を緩和する効果を持ちます。

さらに、リラックスした雰囲気は思考を柔軟にし、予期せぬアイデアや解決策が生まれる土壌となり得ます。

このように、雑談は本題に入る前の「ウォーミングアップ」としてだけでなく、議論そのものの質を高める潤滑油として機能します。

心理的安全性

雑談の重要性を、より具体的に組織論の観点から裏付けたのが、Googleが実施した「プロジェクト・アリストテレス」です。

このプロジェクトは、「効果的なチームを効果的にたらしめるものは何か」という問いを探求し、数百ものチームを分析した結果、個々のメンバーの能力や専門性、あるいはリーダーシップのスタイル以上に、チームの成果を左右する決定的な要因が存在することを発見しています。

それが「心理的安全性」でした。

心理的安全性とは、「このチーム内では、対人関係上のリスクを取っても大丈夫だ」とメンバーが信じられる状態を指しています。

具体的には、無知だと思われることを恐れずに質問したり、失敗を恐れずに新しいアイデアを提案したり、間違いを正直に認めたりすることが、チーム内で許容され、奨励される文化のことです。

心理的安全性が確保されて初めて、メンバーは自身の能力を最大限に発揮し、建設的な議論を通じてチームとしてより良い成果を生み出すことができます。

プロジェクト・アリストテレスは、「誰がチームにいるか」よりも「チームがどのように協力しているか」が重要であり、その根幹に「心理的安全性」があることを明らかにしました。

相互理解の重要性

この心理的安全性を育む上で、冒頭で述べた「雑談」が重要な役割を果たす可能性があります。

プロジェクト・アリストテレスは直接的に雑談の効能を測定したわけではありませんが、その結論は雑談の価値を間接的に示唆しています。

雑談を通じて育まれる相互理解や共感は、「この人たちの前なら、自分の意見を言っても大丈夫そうだ」「失敗しても、頭ごなしに否定されることはないだろう」という安心感につながります。

相手の人となりを知ることで、発言や提案といった「対人関係上のリスク」を取る際の心理的な障壁が低くなるのです。

また、雑談が自然に交わされるオープンな雰囲気は、「ここでは誰もがありのままの自分でいられる」という感覚をメンバーに与え、心理的安全性の高いチーム文化そのものを形成していきます。

まとめ

結論として、会議における雑談は、一概に時間の浪費とは言えません。

チームの土台となる信頼関係を築き、Googleが突き止めた生産性の鍵である「心理的安全性」を醸成するための、不可欠なプロセスに繋がりやすくなります。

ただし、チーム内におしゃべりモンスターがいる場合、その人が単一の問題点になるため、対処を考える必要があります。

効率を追求するあまり、こうした人間的な交流を切り捨ててしまうことは、短期的には時間を節約するように見えても、長期的にはチームの活性や成果を損なう可能性があります。

意識的に雑談の時間を取り入れ、その価値を認識することこそが、真に生産的で創造的なチームを作るための一歩となるでしょう。

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