現代人は、今だかつてないほど豊かな時代に生きています。
スマートフォンひとつで世界中の情報にアクセスでき、物質的な欲求の多くは簡単に満たすことが出来ます。
それなのに、なぜ多くの人が「幸せではない」と感じているのでしょうか。
答えは単純です。多くの人は、自分を幸せにする正しい視点を持っていないからです。
幸せを遠ざける思考の罠
人は過去の失敗を何度も反芻し、起こらない未来を案じて眠れない夜を過ごします。
そして、恋人や友人、同僚といった他者に自分の幸せの責任を委ねて、期待通りにならないと失望する愚かな行動を繰り返しています。
このような生き方では、幸せが手の届かないものになるのは当然です。
必要なのは、3つの行動です。「過去への後悔をやめること。」「未来への心配をやめること。」そして、「他人に幸せを求めることをやめること。」
一見当たり前のように聞こえるかもしれませんが、多くの人がこの単純な真実を実践できていません。
何故なら、これらの行動は思考の癖として深く根付いているからです。
1. 過去を後悔するのはやめる
過去はどうにも出来ません。
記憶としては残っていても、「後悔」という感情に囚われ続けることは、自己効力感を低下させ、うつ病や不安障害のリスクを高めることが知られています。
忘れなくてもいいですが、後悔は引きずっては駄目です。失敗から学習して、同じ過ちを繰り返さないようにすればいいのです。
心理学者のキャロル・ドゥエックが提唱した「成長マインドセット(Growth Mindset)」の考えでは、失敗や後悔を「学びの機会」として捉えることで、前向きな行動変容が可能になるとされています(Dweck, 2006.Mindset: The new psychology of success.)。
後悔は自然な感情ですが、それに囚われ続けるのは精神的に有害です。過去から学びを得ることが「成長志向」への鍵となります。
2. 未来の心配をやめる
米国の心理学者であるロバート・リーヒ氏によれば、人が日常的に抱く不安や心配の約85%は「実際には起こらない」ことがリーヒ氏の臨床経験でわかっています。
つまり、未来の不安を感じるZ出来事に対して過度に心を使うことは、時間と精神力の浪費です。
マインドフルネス(現在に意識を向ける訓練)や認知行動療法(CBT)は、未来への過剰な不安を軽減する有効な手法とされています。
心配の多くは「思考の罠」でしかありません。今に意識を戻す技術(マインドフルネス)で、幸福感と集中力が高まります。
3. 他人に幸せを求めない
他人があなたを幸せにしてくれるなんて考えは幻想です。
本質的な幸せと言うものは100%「自分自身の内面的な行動」からくるものです。
幸福は「内的要因」によって決まる割合が大きいことが、ポジティブ心理学の研究から明らかになっています。
ソニア・リュボミルスキーによれば、「幸福の約40%は自分の意図的な行動と態度」によって決まり、他人や環境要因はその一部に過ぎません(The How of Happiness.)。
他人の承認や愛に依存すると、失望や感情の不安定さを引き起こします。
自律性(autonomy)を持ち、自己決定理論に基づく行動をとることが、持続的な幸福の鍵とされています。
他人は「幸せの引き金」にはなっても「源」ではありません。自己決定と内面の充足が本質です。