人類は昔から「幸せ」を追い求めてきました。
古代では食や安全が幸せの中心的要素でしたが、現在では当たり前に得られる要素となってしまったため「何が幸せか」という幸せの在り方が、個人によって変わっています。
最近では、ポジティブ心理学という分野で、幸せについての科学的な研究が進んでおり、この研究は個人の幸せだけでなく、社会全体の幸福度を高めることを目指しています。
幸せとは何か?
幸福は特定の目標達成や富の獲得だけでは得られません。「○○を手に入れたら幸せになれる」という考え方は、実は幸福への誤った理解とも言えます。出来事による幸せは一時的なものだからです。
日常生活で感じる楽しさや喜びが「幸せ」の基本となります。
楽しい気持ちや心地よさ、感謝の気持ち、希望、そしてやる気が湧くような気持ちなど、こうしたポジティブな感情が積み重なって幸せを形作ります。
幸せに影響するものとして、性格や感情のバランス、体の健康状態などが挙げられます。
他にも、生活環境や経済状況、人間関係の質、目標への取り組み方、時間の使い方なども関わってきます。
幸福に影響を与える要因
研究により、以下の要因が幸福に関係していることが明らかになっています。
- 性格のタイプ
- ポジティブな感情とネガティブな感情のバランス
- 身体的健康
- 社会的地位や経済力
- 人間関係や人との愛着
- 目標と自己効力感
- 時間の使い方や穏やかな環境
幸せの科学
最近の研究では、興味深い発見がたくさんあります。(Happify Daily, n.d.)
例えば、お金と幸せの関係については、年収約800万円を超えると、それ以上お金が増えても幸せはあまり増えないことがわかっています。
また、幸せは生まれつきの性質よりも、日々の経験によって形作られることも明らかになってきました。
特に重要なのが人とのつながりで、良好な人間関係が幸せの重要な要素となっています。
主要な発見
近年の研究では、以下のような知見が得られています。
- お金は年収75,000ドルまで幸福を増大させる。(Kahneman & Deaton, 2010)
- 幸福は主に経験によって形成され、遺伝による影響は少ない。(Lyubomirsky et al., 2005)
- 幸福を過剰に追求すると逆効果になる。(Mauss et al., 2012)
- 社会的つながりが幸福の鍵。(Rohrer et al., 2018)
- 曖昧な目標設定が幸福を増す可能性がある。(Rodas et al., 2018)
- 幸福は市民活動への参加を促進する。(Fang et al., 2018)
- ポジティブな感情は職場での成果を高める。(Walsh et al., 2018)
職場での幸せ
幸せは仕事のパフォーマンス、健康、そして組織の成功に影響を与えます。
職場で幸せな従業員は離職率が低く、非生産的な行動を抑え、職場の文化を向上させる傾向があります。
この結果、顧客満足度が高まり、生産性、会社の業績も向上するという好循環が生まれます。(Fisher, 2010)
幸せに関する面白い発見
幸せな気持ちは、心と体の健康にも良い影響を与えます。
血圧を下げ、免疫力を高め、長生きにもつながることがわかっています。
また、明るい服を着たり、花の香りに触れたりすることで、幸せな気持ちになりやすいという研究結果もあります。
さらに、自然の中、特に水辺にいると幸せを感じやすく、何より、幸せは周りの人にも伝染していくという特徴があります。
幸せを増やすために
幸せを増やすためには、いくつかの心がけが大切です。
完璧を求めすぎないこと、他人と必要以上に比べないこと、モノへの執着を減らすこと、そして今この瞬間に感謝することが重要です。
感謝の練習、マインドフルネス、ポジティブな視点の転換といった習慣を身につけ、脳を訓練することで幸せを感じられるようになります。(Fredrickson et al., 2000)
まとめ
幸せは、感情や人間関係、考え方によって変わる個人的な経験です。
科学的な研究により、幸せを増やすための方法が少しずつ明らかになってきています。
他人への思いやり、感謝する心、更に世界中の知恵を活かすことで、より幸せな社会を作ることが出来ます。
財務的な成功を目指すことも重要ですが、それは人生の一側面に過ぎません。真の豊かさは、日々の生活の中で幸福を見出し、育んでいく過程にあります。
本質的な幸せを見い出しづらい現代社会で、幸せを構築する事は、借金の返済や資産形成と同様に、意識的に取り組むべき重要な人生のプロジェクトです。
上記のような知見を日常生活に取り入れることで、一人一人がより幸せな人生を送ることができるはずです。
References
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