睡眠

睡眠不足が不快な記憶を抑えにくくする|睡眠の質を見直そう

徹夜明けの頭の中は、不快な記憶の流しっぱなしドキュメンタリーのような状態に…今夜こそ早めに寝る事を誓ったものの、その前にもう一話だけNetflixを...なんて考えてしまいがちです。

「眠れない夜は、嫌な記憶が頭をグルグル」夜更かしの代償は思った以上に高くつくようです。

イースト・アングリア大学の研究チームが、健康な参加者が睡眠不足の状態で不快な思考を制御する能力が低下することを発見しました。

この研究は、カナダのクイーンズ大学とイギリスのヨーク大学、ケンブリッジ大学、サセックス大学の研究者たちによって行われました。

  • 睡眠不足は、侵入的思考や不要な記憶をコントロールすることを困難にすることが示唆された。
  • 一晩の睡眠を奪われた参加者は、中立的または否定的な記憶の検索を抑制する能力が低いことが示された。
  • この研究結果は、睡眠不足がメンタルヘルスにどのような影響を与えるかをより深く理解し、治療法の開発に役立つ可能性がある。

一晩の睡眠を奪われた被験者が、不要な記憶を抑制する能力が低下していたことから、研究者たちは、レム睡眠(REM sleep)が記憶抑制のメカニズムを回復させる重要な役割を果たしていると結論づけました。

睡眠不足の脳機能への影響

十分な睡眠をとらない人は睡眠不足の影響を受ける可能性が高まります。

睡眠不足は記憶力の低下をはじめ、学習や集中力の低下、判断力の低下、感情や行動の制御の困難さなど、さまざまな認知機能に影響を与えます。

これは、睡眠中に脳が新しい情報を整理し、記憶を定着させる時間が不足するためです。

適切な睡眠時間は年齢によって異り、研究によると、特に子どもは十分な睡眠をとることで記憶の定着が促進されます。

逆に、過度な睡眠も認知機能の低下につながるため、適切な睡眠時間を確保することが重要です。

年齢に応じた夜間の睡眠の推奨事項は以下の通りです。

  • 乳児(4~12か月): 12~16時間
  • 幼児(1~2歳): 11~14時間
  • 未就学児(3~5歳): 10~13時間
  • 学童(6~12歳): 9~12時間
  • ティーン(13~18歳): 8~10時間
  • 成人(18歳以上): 7時間以上

いくつかの研究で、 睡眠の質は加齢とともに低下することが分かっています。

記憶の処理に関与する「徐波睡眠」の減少が原因の一つとされます。徐波睡眠は脳の内側前頭前野で発生しますが、この部位は加齢により機能が低下し、結果として高齢者は徐波睡眠が減少し、記憶処理が困難になります。

他にも、レム睡眠(REM sleep)が記憶抑制のメカニズムを回復させる重要な役割を果たすことが分かっています。

侵入思考

私たちの頭の中には、時々招かれざる客のように、不快な思考や記憶が突然押しかけてくることがあります。

まるで、頭の中に住み着いた困ったルームメイトのように、「今までのこと、思い出してみない?」なんて、タイミング構わず話しかけてくるんですよね。

これは侵入思考と呼ばれ、ハーバード・メディカル・スクールによると不安をかき立てたり、反復的に思い出したり、中々消し去れない思考を指しています。

この厄介な思考は、ストレスを感じているときや、ホルモンバランスが崩れているとき、あるいは強迫性障害のような状態のときに、より活発になる傾向があるそうです。

研究者たちは、侵入思考との付き合い方について興味深い実験をしました。

85人の健康な大人を二つのグループに分けて、一方には十分な睡眠をとってもらい、もう一方には一晩中起きていてもらっていました。

結果はとても分かりやすいもので、十分な睡眠をとったグループは、侵入思考をうまくあしらえていたのに対して、睡眠不足組は頭の中の制御室(脳の感情や思考をコントロールする部分)が機能低下して、不快な記憶を追い払うのに苦労したんです。

つまり、良質な睡眠は、頭の中の「セキュリティシステム」を正常に機能させる、とても重要な要素なんです。

眠れない夜を過ごした後に、余計なことを考えすぎてしまうのは、実はちゃんと科学的な理由があったというわけです!

睡眠改善のヒント

上記の通りで、不快な思考を減らすには、睡眠の質を改善することが重要です。

以下の方法を試してみてください。

1. アイマスクを着用

街灯や電子機器の光が睡眠を妨げる場合があります。

アイマスクで光を遮断するのは、簡単かつ低コストな解決策です。

2. 10-3-2-1ルールを実践

  • 就寝10時間前にカフェインを控える
  • 就寝3時間前に食事や飲み物を控える
  • 就寝2時間前に仕事を終える
  • 就寝1時間前に画面(スマホやテレビ)をやめる

3. ナイトルーティンを整える

就寝前にリラックスできる習慣を取り入れましょう。

温かいシャワーを浴びたり、読書をしたり、呼吸法を練習したりするのがおすすめです。

寝る前に足を温めたり、4-7-8呼吸法などですんなりと眠れるように勤めることも重要です。

reference:

Memory control deficits in the sleep-deprived human brain - https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2400743122

Managing intrusive thoughts - https://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/managing-intrusive-thoughts

Mander, B., Rao, V., Lu, B. et al. Prefrontal atrophy, disrupted NREM slow waves and impaired hippocampal-dependent memory in aging. Nat Neurosci 16, 357–364 (2013).

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