オンラインでの出会いは、宝探しのような高揚感を与えてくれます。
プロフィール写真や巧みなメッセージのやり取りを通して、私たちは画面の向こうにいる相手に理想の姿を投影しがちです。
これは心理学でいう「ハロー効果」や「理想化」と呼ばれる現象で、限られた情報から相手の素晴らしい側面だけを無意識に増幅させてしまいます。
特に、テキストコミュニケーションでは表情や声のトーンといった非言語的な情報が欠落するため、自分の願望を相手に重ね合わせやすくなります。
多くの人が現実的な人物像や妥協点をあらかじめ設定していないため、無意識に理想的すぎる人物像を相手に投影してしまいますが、マッチングアプリに登録しているような人は残り物なので、理想的すぎる人物は存在していない事に気づいていません。
現実とのギャップと幻滅
胸を躍らせて臨んだ現実世界のデートが、期待とは裏腹に、静かな幻滅の時間へと変わってしまうことは少なくありません。
オンライン上で輝いて見えた「貴重な逸材」も、実際に顔を合わせ、言葉を交わし、同じ空間で時間を過ごす中で、想像とは異なる癖、価値観の小さなズレ、あるいは単純に「思っていたのと違う」という感覚など、人間らしい「欠点」や「不完全さ」が徐々に見えてくるものです。
これは、オンラインでの理想化が招いた、避けがたい現実とのギャップと言えるでしょう。
事前に高めすぎた期待値が、現実の相手を見たときに、まるで落差の激しい滝のように、失望感となって流れ落ちます。
自分が理想としている人物像が抽象的であればあるほど、この現象は顕著になります。
不完全さを受け入れる出会いの再設計
上手くいっていない人は、出会いのプロセスを逆転させてみる必要があります。
完璧な理想像を追い求めるのではなく、最初から相手の「不完全さ」や「人間らしさ」を受け入れる準備をしておきましょう。
婚活で上手くいかない人は、許容度が低く狭量なことが多いです。
社会心理学の研究では、自己開示、つまりお互いの弱さや欠点を見せ合うことが、親密さを深める上で重要な要素であることが示唆されています。
相手の欠点や弱さを知っているということは、非現実的な期待から解放され、より地に足のついた関係性を築くためのスタートラインに立つことを意味します。
そこから、相手の意外な長所や、困難を乗り越える強さ、あるいは日常の些細な優しさなどに気づき、ゆっくりと、しかし確実に魅了されていく…そんな、よりリアルで温かい恋の育み方が現実的です。
減点方式ではなく、加点方式で相手を見ていくような、穏やかで心地よいプロセスと言えるでしょう。
恋愛におけるジレンマと人間の欲求
オンラインでの恋人探しに、このジレンマがなくなることはないでしょう。
「相手のことをよく知っていることから生まれる安心感」と、「未知の相手への期待感や、まだ見ぬ魅力に対するワクワク感(そして、その裏にある落胆のリスク)」という、二つの魅力的な選択肢の間で揺れ動く、人間の本質的な欲求に根差しているからです。
人は予測可能な安定を求める一方で、新しい刺激や発見にも心を惹かれます。
しかし、背景性が担保や収入が担保されている自分の生活圏での出会いを捨てて、何も背景性がない何処の馬の骨ともわからない人物をマッチングアプリで探している事自体、倒錯した行動です。
未知と安心の葛藤
新しい出会いや経験を追い求めることは、常に未知のリスクを伴います。
時間や感情という貴重なリソースを投資する以上、そこには傷つく可能性も含まれています。
手に入れたいと願う「新しい何か」のためには、慣れ親しんだ「安心感」をある程度手放さなければなりません。
馴染みのあるもの(既知・安心)と、まだ見ぬ異質なもの(未知・刺激)との間で揺れ動く葛藤は、恋愛に限らず、私たちが人生で何かを選び取ろうとするときに、常に付きまとう普遍的なテーマです。
恋人探しという、人生の大きな選択においては、この葛藤が特に色濃く表れるのでしょう。