人は全ての支出を同じ基準で考えるべきですが、実際には無意識のうちにお金を分類し、その分類に応じて使い方を変えています。
例えば、ボーナスは贅沢に使い、給料は節約し、割引で得た分はあまり大切にしないといった具合です。
この行動は必ずしも合理的ではありませんが、多くの人に見られる一般的な傾向であり、感覚的にお金を分けて考え、使い方に違いを生じさせる行動をメンタル・アカウンティングと言います。
メンタル・アカウンティングとは
メンタル・アカウンティング(Mental Accounting)とは、行動経済学の概念で、人が心の中でお金を異なる「アカウント(口座)」に分けて管理する傾向を示します。
これによって、実際の経済合理性とは異なる行動や意思決定を引き起こすことが多く、個人がどのようにお金を考え、使い、管理するかに影響を与えます。
例えば、ある人が「食費」と「旅行費」の2つの予算を考えていて、食費の予算が超えてしまったとしても、旅行費には十分なお金がある場合、余剰分を旅行で使うのは問題ないと考えます。
このように、メンタルアカウンティングは、厳密な合理性を欠くことが多いのです。
具体的には、人はお金を「用途」や「出どころ」によって異なる価値として扱うことがあり、以下のような行動に反映されます。
1. お金の出どころによる違い
ボーナスなどの臨時収入は、通常の給料と異なり、「贅沢」や「娯楽」に使う傾向が強くなります。
同じ金額でも、宝くじで当たったお金と、汗水流して稼いだお金とでは使い方が異なります。
2. 支出のカテゴリー化
人は支出を「家賃」「食費」「娯楽費」など、異なるカテゴリーに分けて考えます。
そして、それぞれのカテゴリーに予算を設定し、それを守ろうとします。
たとえば、「食費」の予算が余っているからといって、無駄遣いしてしまうことがある一方で、「貯蓄や投資」など他の用途のお金は慎重に使うかもしれません。
3. 損失と利益の心理的評価
損失回避バイアスと関連して、人はお金を失うことを強く嫌がります。
同じ金額を得た場合よりも、失った場合の方が精神的に大きなインパクトを感じます。
例えば、株式投資で得た利益を使うことは心理的に容易ですが、元本からの損失を取り戻すためには、リスクの高い行動を取る事になります。
4. 先入観による予算配分
特定の目的のために、あらかじめお金を「メンタル的」に確保して、それ以外に使うことをためらうことがあります。
たとえば、車を買うための貯金を、医療費や教育費に使うのは気が引けるという感覚です。
メンタルアカウンティングの影響
メンタルアカウンティングは、個人がどのようにお金を捉え、使うかに大きな影響を与えます。
- 消費行動: 特定の目的に使うお金は、他の目的には使わない傾向があるため、資金管理が柔軟ではなくなる可能性があります。
- 投資行動: 損失回避やリスクの過小評価により、非合理的な投資決定をすることがあります。
これを理解することで、より合理的な意思決定を行う助けになります。