巷で〇〇が流行っている!と言う情報が出ると、なぜかそれを調べて流行に乗ってみようと考える人は少なくありません。
人は「まわりの人と同じでいたい」という気持ちと、「まわりとは違っていたい」という背反する気持ちを併せもっています。
流行には、こうした背反する心理が絡み合っています。
流行に乗ってしまう心理
人が流行に乗ってしまうのは、複数の心理的な要因が影響しています。
人間の心理は非常に複雑で、流行への参加は単なる消費行動を超えた、深層心理を反映する興味深い社会現象です。
複数の心理的メカニズムが複雑に絡み合い、人は知らず知らずのうちに流行に引き寄せられていきます。
この背景には、主に4つの心理的要因が関連しています。
社会的証明の心理
人間は進化の過程で、多数派の行動を「正しい」または「安全」と判断する傾向を備えてきました。
これを「社会的証明」と呼びます。
多くの人々がある行動を取っていると、それが正当で信頼できる選択であると無意識のうちに感じやすくなります。
流行に乗ることで、自分の選択に対する不安を軽減し、集団との一体感や社会的な安心感を得られるのです。
所属欲求の影響
人は本質的に社会的な存在であり、他者とのつながりや集団への所属を求めます。
流行に乗ることは、単なるトレンドの追随以上の意味を持ち、同じコミュニティや世代の人々と共感し、つながりを感じる手段となります。
共通の話題や経験を持つことで、人間関係を円滑にし、孤立感を防ぐ心理的な戦略が働いていると考えられます。
新奇性の欲求
人間の心は常に新しい刺激を好む傾向があります。
マンネリ化した日常から脱却し、何か刺激的で楽しいものを求める心理が、流行への関心を高めます。
最新のトレンドは、退屈な日常に楽しみと変化をもたらす「非日常」の体験として魅力的に映ります。
自己表現の手段
流行は単なる模倣ではなく、自分自身を他者に示すための重要な表現手段でもあります。
特にファッションやテクノロジーの分野では、最新のトレンドを取り入れることが、自分の個性や価値観、センスを外部に示すコミュニケーション手段となります。
他者と差別化しつつ、同時に所属感も得られる、絶妙なバランスの社会的戦略と言えるでしょう。
流行に乗る人の分類
社会学者のエヴェリット・ロジャースは、流行が広まっていく様子を5つに分類しました。
この理論は「イノベーター理論」と呼ばれており、商品を購入する時期ごとに5つのグループに分けられます。
- イノベーター(2.5%): 最も革新的で、進んで新しいものを取り入れる人々です。最先端のトレンドに敏感で、変化を楽しむ傾向があります。
- アーリーアダプター(13.5%): 流行に敏感で、いち早く新しいトレンドを取り入れる人々です。周囲に影響を与える可能性が高いグループです。
- アーリーマジョリティ(34%): まわりの人々と同調し、比較的早い段階で流行を取り入れる人々です。
- レイトマジョリティ(34%): アーリーマジョリティにさらに追随する人々で、大多数を占めるグループです。
- ラガード(16%): 流行に関心がなく、最後まで新しいものを受け入れない人々です。
グループの位置によって、人々の心理的傾向も異なりま。
1に近いグループは「まわりとは違っていたい」「新しい自分になりたい」といった欲求が強くなります。
5に近いグループは「まわりの人と同じがいい」「あこがれの存在を真似したい」といった欲求が強いくなります。
ただし5に近いグループは、最初から非常に個性的な人が存在し、そう言った人達は例外となります。
興味深いのは、ラガードを除く84%の人々が何らかの形で流行に追随するということです。
これは、人々が社会的影響や同調圧力に敏感であることを示しています。
分類の解説
「イノベーター」は、まだ商品が流行するかどうかもわからない時期に購入します。
このような流行の最先端をいく人は、「まわりとは違っていたい」という「自己顕示欲」が非常に強いタイプです。
それに続く「アーリーアダプター」にも、同じ傾向があります。
「イノベーター」や「アーリーアダプター」は、初めから新しい波を探している傾向があるため、過激な言葉に扇動されやすく、方向性に対する信頼感に欠けることがあります。
「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」など、大多数の人が商品を購入する時期には、「みんなと同じ物が欲しい」といった所属的な欲求が強く働きます。
なかには、「流行遅れと思われたくない」「自分だけ違うと思われたくない」という気持ちから、商品を購入する人もいます。
こうした、みんなと同じでいたい、目立ちすぎたくないという無意識の心理作用を「斉一性の原理(斉一性への圧力)」と言い、いわゆる社会的圧力を生みます。
流行後に商品を購入する人や、そもそも流行を意識しない人は、まわりに振り回されないタイプといえます。
あなたはどれに当てはまるでしょうか?