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テレビに向かって喋る人の心理とは?孤独を癒す擬似コミュニケーション

2025年4月17日

ずっと喋っている人の心理と似たような話で、よくある世間的な問題の1つに「うちの親はテレビと話していてもうボケてしまったのではないか?」と言うものがあります。

実際、人が動物意外と話しているさまは奇妙なので、はたから見るとボケてしまったのではないか?と心配を抱くのも分かります。

こう言った人たちにも幾つかのパターンがあります。

シンプルに楽しんでいる

意外と多いのが楽しんでいるパターンです。

感動、怒り、喜びなど、視聴中に生じた感情をテレビに向かって表現することで、内的なストレスを軽減します。

くだらないクイズ番組や、低予算の素人歌自慢でも本人は静かにエキサイトしています。

テレビ番組の多くは、老人向けにテンポを落とした番組が圧倒的多数です。

高齢者にとって、テレビは単なる娯楽以上の存在となっており、孤独感を和らげ、外の世界とのつながりを感じられる重要な媒体なのです。

孤独感の緩和

一人暮らしや高齢者など、孤独を抱えやすい人々にとって、テレビは単なる情報源や娯楽以上の存在となる可能性があります。

彼らは、テレビに話しかけることで、独特の心理的メカニズムを働かせています。

存在感の再確認

テレビに語りかけることは、自分の存在を具体的に感じ取る手段となります。

声を出すこと、反応すること自体が、自分が「ここにいる」という実感につながります。

特に長時間誰とも会話しない環境では、この行為は重要な心理的サポートとなります。

擬似的なコミュニケーション

テレビは返答しませんが、「相手がいる」という錯覚を作り出し、孤独感を軽減します。

画面の人物や出来事に反応することで、「誰かと一緒にいる」という錯覚が生まれ、実質的に孤独感を軽減する効果があります。

このようなテレビとの関わり方は、単なる奇異な行動ではなく、人間の本質的な社会性と心理的ニーズから生まれる、対処的な行動と言えます。

反応しない安心感

テレビは一方通行のメディアであり、反応を期待せずに話しかけることができます。

これにより、自分の意見が否定されることなく安心して話すことができるため、自信を持って自己表現を行うことができます。

通常の対人コミュニケーションでは、否定や批判、判断されることへの恐れが常に存在します。

しかし、テレビに向かって話す場合、こうしたリスクがありません。

批判されることなく、ありのまま感情を吐き出せるため、抑圧されている内面を自由に解放しています。

社会的つながりへの欲求

人間は本質的に社会的な生き物であり、他者とのつながりを求めます。

テレビのキャラクターやニュースキャスターに話しかけることで、擬似的な対人関係を感じることができ、孤独感を和らげることがあります。

特に一人暮らしの高齢者や、孤立感を感じている人にとっては重要な行動になってしまいます。

仮想と現実の境界の曖昧さ

テレビと話す行為は、仮想と現実の境界が曖昧になっている可能性があります。

哲学者ジャン・ボードリヤールの「シミュラークル理論」が参考になります。

彼は、テレビが単なる現実の模倣を超えて、独自の現実を生成する存在であると指摘しました。

つまり、テレビは現実を「映す」だけでなく「作り出す」メディアでもあるのです。

テレビに対話を試みることは、現実と虚構が交差する行為となり、その人にとって新しい現実を創造する装置となっています。

存在論的な問いかけ

意外かもしれませんが、声を出すことは、自分がその場に「存在している」という感覚を確認する手段でもあり、現実への接続を図る行動になります。

テレビとの対話によって、「現実とは何か」「相手は誰か」「コミュニケーションの本質とは何か」といった存在論的な問いを促します。

この行為は、現代のコミュニケーション形態の複雑性や、メディアとともに変容しつつある現代的な存在のあり方を象徴しています。

まとめ

テレビと話す行為は、人間が持つ「他者を求める心」と「自分を認識したい欲求」の本質が表れた行為であり、心理学的には「擬似的な交流」や「感情の発散」、哲学的には「自己と他者の関係性」や「実存の確認」として解釈できる行為です。

単なる癖や無意識の行動と見なされがちですが、人間の孤独感、存在感、そして社会的本能が反映された人間的な行動と言えます。

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