早朝フライト、徹夜明けの仕事、子育てやシフト勤務。
「今日はどう考えても寝不足だけど、休めない」そんな日は誰にでもあります。
筆者自身、先日深夜1時起きで空港へ向かう予定があり、睡眠時間は正味3時間ほどでした。
頭は重く、判断も鈍い感覚があり、「この状態で1日持つのか?」と不安になったのを覚えています。
そこで睡眠心理の研究に携わる専門家に相談したところ、返ってきたのは意外にもシンプルな言葉でした。
「寝不足は取り戻せません。でも、悪化させない行動は選べます」
ここでは、その考え方を軸に寝不足の日を「我慢で乗り切る」のではなく、「回復を邪魔しない形で過ごす」ためのポイントをまとめています。
寝不足の日、体と脳では何が起きているのか
寝不足というと「眠い」「だるい」といった感覚的な問題で語られがちですが、実際には注意力や判断力といった認知機能にも影響が及ぶことが知られています。
睡眠時間が6時間未満の状態が続くと、反応速度や判断力が、軽度の飲酒時と同程度まで低下する可能性があると報告されています。
この影響は、通勤時の運転や仕事中の判断ミスなど、日常のささいな場面で表れやすくなります。
なぜ「寝不足」は意外と尾を引くのか
脳は深い睡眠中に、記憶の整理や神経活動の調整を行います。
この工程が十分に確保できないと、翌日だけでなく、その後のパフォーマンスにも影響が残ることがあります。
そのため寝不足の日は、「今日は気合で乗り切ろう」と考えるよりも、回復を妨げない行動を意識することが重要になります。

1. 水分と軽めの食事を切らさない
寝不足のときに起こりやすいのが、食行動の乱れです。
判断力に関わる脳の働きが低下すると、無意識のうちに糖分や刺激の強い食品を選びやすくなる傾向があります。
睡眠研究の分野では、次のような指摘がされています。
疲労時ほど、血糖値を急激に変動させない食事が望ましい
甘い菓子パンやスナックを避け、水・ヨーグルト・ドライフルーツを手元に置くようにして下さい。
それだけで、午後の重だるさが和らぐ助けに繋がります。
取り入れやすいもの
- ナッツ、ヨーグルト、果物
- 水、炭酸水、ノンカフェインのお茶
控えた方が無難なもの
- 菓子パン
- エナジードリンク
- アルコール
2. カフェインは「朝の時間帯」に限定する
寝不足の日ほどコーヒーに頼りたくなりますが、摂取する時間帯によっては、夜の睡眠に影響を及ぼす可能性があります。
カフェインは体内に比較的長く残るため、午後以降の摂取が夜間の入眠を妨げる一因になることもあります。
専門家から勧められたのは、次のようなルールでした。
- コーヒーは朝の時間帯だけ
- 量は1〜2杯程度まで
- 午後は水分補給に切り替える
この方法に切り替えたことで、「寝不足なのに夜も眠れない」という悪循環は避けやすくなりました。
3. 起きたらまず光を取り入れる
寝不足の朝に頭がぼんやりする原因の一つが、体内時計のズレです。
朝の自然光は、眠気に関わるホルモン分泌のリズムを整える一因とされており、覚醒の切り替えを助ける役割があります。
外に出られる場合は、数分でも構いません。
難しい場合は、次のような方法でも代替できます。
- カーテンを全開にする
- 明るめの照明を使う
- 窓際で食事や作業をする
「光を入れる」だけでも、体は思った以上に反応してくれます。
4. 軽く体を動かす
寝不足のときほど、「動かずにやり過ごしたい」と感じがちですが、短時間の軽い運動は、眠気の軽減につながることがあります。
体を動かすことで血流が促され、結果的に頭がすっきりする感覚を得られる場合があります。
おすすめは、本当に短いもので十分です。
- 1〜2分のストレッチ
- 階段を使う
- 10分ほどの散歩
筆者も昼食後に少し歩くことで、午後の集中力が戻った感覚を経験しています。

5. 昼寝や極端な早寝に注意する
寝不足の日ほど「早く寝て取り戻したい」と思いがちですが、極端な早寝や長い昼寝は、体内リズムを乱す要因になることがあります。
睡眠は量だけでなく、タイミングの安定性も重要とされています。
どうしても眠気が強い場合は、
- 15〜20分以内
- タイマーを使う
- 横にならず座ったまま
といった条件を意識すると、夜の睡眠への影響を抑えやすくなります。
寝不足を繰り返さないために意識したいこと
睡眠の専門家がよく口にするのは、次の考え方です。
寝不足は努力不足ではなく、環境と習慣の結果
「頑張って起きている自分」を評価するよりも、眠れる条件を整える行動に目を向ける方が、長期的には安定します。
翌日に備えるための習慣
- 夜は照明を落とし、スマートフォンを見る時間を減らす
- 予定を詰め込みすぎない
- カフェインやアルコールを控える
これらは、複数の医療・研究機関でも一般的に推奨されている内容です。
まとめ|寝不足の日の行動チェック
- 水分と軽めの食事を意識する
- カフェインは朝の時間帯だけ
- 起きたら光を取り入れる
- 短時間でも体を動かす
- 睡眠リズムを大きく崩さない
寝不足の日を「なんとか耐える日」にするか、「回復を邪魔しない日にするか」で、翌日の状態にははっきり差が出ます。
1日の選択が、次の眠りを助けます。
参考文献
- Sleep Foundation [https://www.sleepfoundation.org]
- Harvard Health Publishing [https://www.health.harvard.edu]
- Cleveland Clinic [https://health.clevelandclinic.org]
- National Institute of General Medical Sciences [https://www.nigms.nih.gov]
- NASA Technical Reports Server [https://ntrs.nasa.gov]