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集中力を23分早く取り戻す!科学が証明したパーキングロット法

2023年10月16日

仕事中や勉強中、関係のないことをふと思い出して集中が切れた経験はありませんか?

実はその一瞬の「脱線」、取り戻すのに平均23分もかかると言われています。

これは「タスクスイッチング」と呼ばれる現象で、私たちの生産性を静かに奪う脳の癖です。

しかし、科学的に裏付けられたシンプルな方法で、この集中力の低下を防ぐことができます。

その方法が「パーキングロット法(Parking Lot Method)」。

この記事では、心理学と神経科学の観点からそのメカニズムを解説し、今すぐ使える実践ステップまで詳しく紹介します。

なぜ人は集中を失うのか?|タスクスイッチングの正体

南カリフォルニア大学の研究(2010年、Gloria Markら)によると、人は一度注意が逸れると平均23分15秒かかって元の作業に戻ることが分かっています。
これが「タスクスイッチングコスト」と呼ばれるもので、脳が異なるタスクへ切り替える際の再起動時間のようなものです。

通知音、メール、SNS、ふと思い出した「やるべきこと」。

これらは全て脳内で「未完了タスク」として残り、作業メモリを圧迫します。

結果、集中は途切れ、仕事の効率が大幅に低下します。

この現象は意志の弱さではなく、脳の構造的な性質です。

つまり、あなたが集中できないのは怠けではなく、仕組みの問題なのです。

煩悩は悪ではない|人間の脳が「今」を優先してしまう理由

人間は本能的に「今」に価値を感じる傾向があります。

これは心理学で「遅延による割引効果(delay discounting)」と呼ばれ、未来の報酬よりも現在の小さな刺激を優先してしまう心理メカニズムです。

「今メールを返信した方がスッキリする」

「今ちょっと調べたい」

そう思ってしまうのは自然なこと。むしろ人間として当然の反応です。

林修氏の有名なフレーズ「いつやるのか?今でしょ!」は、まさにこの脳の性質を突いた言葉。

つまり、私たちが集中を途切れさせる原因は「悪い癖」ではなく、「脳が今を大切にする性質」なのです。

では、この性質を逆手に取るにはどうすればよいのでしょうか?

その答えが「今メモに書く」という行動です。

解決策|気になることを「書き出す」だけで集中が戻る理由

作業中に思い浮かんだ別のタスクやアイデアを「後でやろう」と頭の中に留めると、脳はそれを「未完了のまま保持」し続けます。

心理学ではこれを「ツァイガルニク効果」と呼び、未完了のタスクが記憶に残り続ける現象を指します。

この状態が続くと、脳のメモリは常に「別のこと」で埋まり、今の仕事に全力を注げなくなります。

そこで役立つのが「パーキングロット(Parking Lot)」という手法です。

パーキングロット法とは?

もともとは会議術として使われていたテクニックです。

会議中に議題とは関係ないが重要な話題が出た際、「今は扱わないけど後で検討する」ものをホワイトボードの隅にメモしておく。

この「駐車場(Parking Lot)」が語源です。

これを個人の作業に応用します。

つまり、「今気になるけど、今やるべきではないこと」を一時的にメモに「駐車」しておくのです。

パーキングロット法のやり方:3ステップで雑念を整理

1. メモ用紙または専用ノートを用意

デジタルより紙がおすすめ。書くという行為が「脳内タスクの切り離し」を促します。

2. 作業中に思い浮かんだことをすぐ書き出す

例:「後でメール」「新しい資料のアイデア」「買い物リスト」など。

書くことで脳は「このタスクは安全に保管された」と判断し、現在の作業に集中できます。

3. 書いた内容は後で確認し、必要なら別タスク化

一日の終わりに見返し、行動リストへ転記すればOK。

重要でなければ破棄して構いません。

この習慣を取り入れるだけで、集中を取り戻すまでの時間が短縮し、作業効率が劇的に上がります。

実践テンプレート&応用例|自分専用の集中メモを作る

パーキングロットは自由度が高い手法です。

以下のようなテンプレートを使うと、さらに効果的です。

思い浮かんだこと 分類 処理タイミング
〇〇さんにメール 仕事 本日17:00
新しい企画アイデア 発想メモ 明日以降検討
買い物リスト(文具) 私用 帰宅後

応用例:

  • ポモドーロ・テクニックと組み合わせて「25分ごとにパーキングロット確認」
  • チーム作業では共有Googleスプレッドシートで全員の「Parking Lot」を見える化
  • 勉強中の学生は「後で調べる単語」を書き留める活用も有効

よくある質問|パーキングロット法の疑問を解消

Q:スマホメモでも代用できますか?

A:可能ですが、通知が集中を乱す場合があります。紙メモを推奨します。

Q:書きすぎて時間がかかる時は?

A:「10秒以内に書ける範囲」だけを残し、詳細は後で追加すればOKです。

Q:チームで共有したい場合は?

A:スプレッドシートやNotionで「Parking Lot」欄を設け、誰でも追記できるようにしましょう。

まとめ|「今メモする」だけで集中は取り戻せる

集中力を保つコツは、意志の力ではなく「仕組み」で制御することです。

人間の脳は注意をそらすようにできていますが、その性質を理解すれば味方にできます。

今日から、気になることが浮かんだら「メモに駐車」してみましょう。

あなたの脳はすぐに作業へ戻れるようになります。

参考文献・出典

  • Gloria Mark, Daniela Gudith, Ulrich Klocke (2010). The Cost of Interrupted Work: More Speed and Stress. Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems.
  • Baumeister, R.F., & Tierney, J. (2011). Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength.
  • 南カリフォルニア大学(USC)研究データ、集中持続時間に関する調査

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