現代の職場は、生産性だけでなく従業員のメンタルヘルスにも深刻な影響を与えている――
その原因の一つが「退屈なオフィスデザイン」だと、新たな調査が警鐘を鳴らしています。
Kinly社の最新レポート「Art of Productivity」によると、味気ないオフィス環境は士気を下げるだけでなく、多くの従業員が将来の働き方を見直すきっかけにもなっています。
特にイギリスの24〜35歳の労働者のうち、46%が「魅力のない職場のせいで退職を考えたことがある」と回答し、21%は「精神的に悪影響を受けている」と答えました。
メンタルヘルスはオフィスの設計ミスに隠れてしまっている
この状況を受け、音響映像(AV)部門と人事部門が連携し、テクノロジーを活用した職場改善に取り組む企業が増えています。
実際、69%のAVチームが従業員のウェルビーイング向上を目的に人事と協力しており、過半数の企業がデジタルサイネージやビジュアルツールを導入しています。
従来の福利厚生や制度変更ではなく、AVを活用した創造的なオフィスデザインが注目されているのです。
KinlyのCEO、トム・マーティン氏は「オフィスデザインはもはや見た目の問題ではなく、戦略そのものだ」と述べ、テクノロジーの創造的な導入が職場の魅力向上に直結すると強調しています。
また、ビジュアルアーティストのベン・シェピー氏も「柔軟なリモートワークは魅力的だが、創造性を保つにはテクノロジーの支援が不可欠」とし、チームの発想力を引き出す環境づくりの重要性を説いています。
進化するオフィス環境|AV技術の役割と「原点回帰」
こうした動きは視覚的な魅力にとどまりません。
31%の海外企業が神経多様性のあるスタッフを支援するためにAV技術を活用しており、感覚に配慮した機能やアクセシビリティ重視の設計が、健康的な職場づくりに寄与しています。
さらに、AV専門家の71%が「こうした技術はハイブリッド勤務における一体感の維持に不可欠」と考えています。
ただし、デジタルディスプレイや感情に反応するデザインといった新技術の長期的な効果には、まだ不透明な部分もあります。
どれほど没入感のあるAV技術でも、スタンディングデスクや高機能な椅子といった基本的な設備の重要性を超えることはできない、という声も根強いのです。
快適さや集中力に直結する基本ツールを優先すべきだ、という考えも見逃せません。