すべての人間関係は「ギブアンドテイク」で、バランスよく物事が進む前提のもとに成り立っています。
この均衡が崩れると、ストレスや不満が生じることが強まります。
しかし、属人化させる「お局様」や「仕事を奪う事を生業にしているテイカー」が多くの企業で存在しており、他人に与えることが好きな人だと、なぜ奪うことを望む人がいるのか理解し難いかもしれません。
仕事でもプライベートでも、他人の尻馬に乗り、自分がやっていないことを手柄にし、他人の負担を増やすのが好きな人に心当たりが有るのではないでしょうか。
ここでは公平に仕事をしない人の心理と、それに対する対処する方法をまとめます。
協力の社会心理学
ピッツバーグ大学のルーカス・サーマー氏の研究(2022)によると、人間関係における「与える」と「受け取る」のバランスは、「人類の成功の基盤」となるほど重要です。
一見誇張のように思えるかもしれませんが、その理由を考えてみましょう。
研究者たちは、「一つの弱点が、プロスポーツチームの勝利、外科チームの命の救助、災害対応チームの成功を左右する可能性がある」と指摘しています。
この分野に関する心理学的研究は少なく、特に「怠ける人が意図的かどうか」「その行動が他のメンバーにどのような影響を与えるか」といった問題には十分な解明がなされていません。
サーマーらが注目するのは、個人の行動が他の人々に与える影響です。
具体的には、グループ内の非協力的なメンバーに対して、その行動の理由次第で周囲の反応が大きく変わる点を示しています。
例えば、グループで贈り物のために募金をしているとします。
一人のメンバーが金銭的に余裕がなく、参加したいけれどできない場合、多くの人は理解を示すでしょう。
しかし、この人が余裕のあるように見えながら協力しない場合、他のメンバーは苛立ちを覚え、周囲の反感を買うことが多くなります。
協力しないスタンスは、その行動の本質が「自己中心的」なのか「意図的なのか能力不足なのか」という解釈に左右されるのです。
グループのためになることをしたい
グループの成功を願う人は、できる限りの努力を尽くします。しかし、能力が足りない場合は限界があります。
サーマー氏は「さらに努力すれば能力を得られるのでは?」という視点を提起します。
グループの利益を考える「プログループ意図(pro-group intent)」があるかどうかが、他人の行動を判断する上で重要だと指摘しています。
サーマーらの研究チームは、この「グループへの意図」が貢献の評価にどのように影響するかを調べるため、1000人以上を対象にした5つの実験を実施しました。
実験の結果、資金が不足していて貢献できない人は理解されやすいですが、十分な資金があるのに協力しない人は批判されがちです。
同様に、能力が不足している場合でも、その能力を得ようと努力する姿勢がある人は、好意的に受け入れられやすいのです。
たとえ特定のタスクが難しい場合でも、必要な能力を得たいという姿勢を示せば、チーム内で否定的に見られる可能性は低くなります。
テイカーにギブアップさせる
ピッツバーグ大学の研究は、非協力的なメンバーの行動や、その人を厳しく評価してしまう理由を説明します。
「プログループ意図」が欠けていると見なされる人は、チームに必要な存在ではないと考えられがちです。
しかし、どうしても一緒に働かなければならない場合、彼らの悲観的な態度を楽観的なものに変えることが鍵となります。
悲観主義を楽観主義に変えるには、、小さな成功体験を提供したり、能力を高める具体的な手助けをすることで、相手が努力する意欲を持つ可能性が高まります。
相手が必要な能力を得られないと考えている場合でも、小さなステップから挑戦するよう励ましてみましょう。
グループの中でポジティブな雰囲気を作るには、怠け者やテイカーを拒絶するのではなく、サポートすることで意外な結果につながるかもしれません。
心では貢献したいと思っている人なら、その助けを感謝し、熱意をもって応じるはずです。
全体の問題を解決するわけではないにせよ、身近な人々のベストを引き出すことは出来るのです。
まとめ
人間関係の成功にはギブ&テイクのバランスが欠かせません。
しかし、集団の中で一人が「奪って」いるように見えると、他の人々の間に不満や憤りが生じることがあります。
テイカーが意図的に貢献を避けているのか、それとも貢献する能力がないのか、という問題は、テイカーの行動に対して他人がどう対応しなければならないかを決める上で極めて重要です。
集団の中でポジティブな感情を促進するためには、全員の長所を引き出すことが不可欠です。
テイカーを拒絶するのではなく、サポート役に徹し、少しずつでも貢献できるように促すことが有効かもしれません。
正しいサポートがあれば、与えようとする人は熱心に助け、全体とって最もベストな形を引き出すことができます。
ReferencesThürmer, J. L., & Kunze, F. (2023). Reaction to poor performers in task groups: A model of pro-group intent. Journal of Personality and Social Psychology, 124(1), 123–144. https://doi.org/10.1037/pspi0000396.