「回避行動」とは特定の考えや感情を避けよう、逃れようと選択する行動のことです。
回避行動は、「する」こと(例:不安を払拭するために過剰に手を洗う)と「しない」こと(例:気まずい会話をいつまでも先延ばしにする)があります。
多くの場合は「しない」事、目先のストレスゲインを避け、嫌なことを先延ばしするという事にフォーカスが当てられると思います。
- 「気を遣うから親戚の家には行かない」
- 「下手だからカラオケは歌わない」
- 「怒られそうだから歯医者にはいくことを先延ばしにしている」
- 「部屋を片付けなくちゃと思いながらも何年も片付けていない」など
避けるという対処をすると、その場をしのげて一安心です。しかし、避けるという対処を続けると、その時は安心ですが、長い目でみると克服する機会が得られなくなり、苦手意識がなくならず、不安が維持されてしまいます。
本来簡単にできるはずのことができなくなっていき、精神的なハードルが高くなった結果、自信がなくなり、段々と出来ない事が増えていく自分に、悪いイメージがついてしまいます。
自信がなくなった結果、人と会うのがストレスになれば今度は人を避けるようになり、スーパーで知り合いを見かけたら避けるように歩くとか、電話がかかってきても出たくないなど、新たな回避行動が生まれていきます。
逆に「する」事でも回避行動は成立します。
- 摂食障害の人は、太っていると感じることを避けるために多大な努力をしますが、そうすればするほど、体重や体型を気にしながら生活することになります。
- 見捨てられることを恐れる人が必要以上に行動し(例えば、パートナーに「私を見捨てないと約束してくれますか」と何度も尋ねる)、自分の不安を軽減するために安心感を求めることで、パートナーが安心感を与えることにうんざりして、破滅的な自己実現的なになってしまう。
このように「するしない」いずれにおいても、回避行動が多くなると、逃げようとしていたことをより多くの経験することになるので、不安が雪だるま式に大きくなるのです。
最悪の場合、ネガティブな反復によるうつ病など、心の病になってしまいます。
これを見て自分もやばいかもと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
残念なもので、回避行動は誰にでもある普通のことで、反芻(考えすぎること)も回避行動の一種と考えられています。(不安な感情から逃れようとして反芻するためです)
この悪循環から抜け出すにはどうしたら良いかと言えば、当然回避行動を止める事です。
では回避行動を減らすための方法をご紹介します。
対処法
瞑想の考え方に言葉を一つ心に持ち歩く(お守りを準備する)というものがありますが、この場合それほど効果は無いでしょう。その程度で改善されたら誰でもやっています。
実際にやってみる事、行動アプローチが不安を軽減する事になりますが、まずは認識する事から始めます。
回避した時のコストを認識する
回避した結果あなたに何をもたらしましたか?
回避行動はどれだけの時間と精神的エネルギーを消費しましたか?
それはあなたの健康にどのような影響を与えましたか?
人間関係に影響を与えましたか?
自分が有能な人間であるという感覚にどのような影響を与えたでしょうか。避けるという行動を取った時にどのようなリソースがどの程度消費したかを自問自答してみましょう。
不快な思考や感情を我慢することを学ぶ
思考や感情は本来一時的なものなので、経験したくない思考や感情が発生した場合、自然に過ぎ去るまで我慢する方法を学ぶ必要があります。これができるようになれば、回避行動をとる必要はありません。
不安を覚悟することは、結果として不安を減らすことにつながります。そのために役立つことは以下の通りです。
- 思考や感情が不安になる出来事の引き金を引いた時や、自虐的な行動をとってしまったときに、緊張して体が強張るのではなく、柔らかくなることを意識してこの感じを学びましょう。
- 生理学的な自己鎮静法、例えば腹式呼吸や丹田呼吸法を学び実践します。(ゆっくりとした呼吸をすることで副交感神経を活性化させ、心拍数を下げて、より明確な思考ができるよう促します)
- そもそも思考は歪んでいることが多いものです。ネガティブな考えなど信用することはできないことを認識しましょう。
- 自己調整能力(セルフコントロール)を高める。例えば、過食しがちな人は、必要なエネルギー量に合わせて食事の時間を決め、その時間以外に食事をしたり、食事の時間をスキップしたりせず、必ずその時間にだけ食事をするなどです。
- いわゆる拡散のスキルを使って、侵入してくる思考の心理的な影響を軽減します。例えば、侵入してきた考えを馴染みのある曲に合わせて歌います。こうする事で考えが拡散し、思考が余計な不安に定まらなくなります。一見すると奇妙ですが、多くの人にとって拡散スキルは非常に効果的です。
自己調整能力(セルフコントロール)を繰り返す事がまさにそうですが、人というのは回数をこなせば必ず慣れ、そして上手くなります。
人間は慣れの生き物なのでやがて平気になります。そして計画を立て、代替行動を立案するなど自分の成長を実感することでだんだん自信が出てくるというわけです。
不思議なもので一つの事に自信が持てれば他の事もできる気がしてくるので、挑戦する勇気が湧いてきます。
今までは避ける生き方だったのが、チャレンジする生き方へと変わると、「久しぶりに親戚の家に行ってみよう」とか「笑われてもいいからカラオケを歌ってみよう」とか、資格試験受けてみようかな、一人旅でも行ってみようかな、前からやりたかった事を始めてみようかな、と言った具合に自信がつくと好奇心やチャレンジ精神も同時に湧いてきます。
曝露療法
回避行動を取りがちな不安症の人は、不安な場面を過剰に避ける傾向にあります。
不安という感情は大よそ20~30分でピークになり、その後、不安はだんだんと自然に小さくなります。このような不安に慣れていく現象を「馴化」といいます。曝露療法は、この馴化を利用していきます。
曝露療法は、不安な場面に挑戦する練習していきます。いきなり難しい課題にチャレンジするのではなく、「がんばれば何とかできる」というレベルの課題から段階的にチャレンジします。
例えば、道端のお地蔵さんに会釈することから始め、最終的に知らない人に挨拶が出来るようにするなど、高いハシゴを一段ずつ上る練習をするようにやっていきます。練習していくと、不安な状況を避けずとも「案外大丈夫だった」「最悪なことは起こらなかった」という新たな発見をし、結局何もトラブルがおこらなかったと認識出来るでしょう。
段階を積むステップの刻みが難しいため、本来、医師やカウンセラーと一緒に行うものなので、注意しましょう。
まとめ
回避行動をするかしないかで大きな差が生まれ、回避行動は不幸の始まりになります。
ストレスを避けてばかりいると自信を失うだけでなく、人生全体がつまらなくなったり、更には心の病になる可能性もあります。
悪循環から抜け出すには、不安というものは所詮一時的なものだと認識し覚悟し、小さな行動から挑戦してみましょう。
これに少しずつ慣れていき、自分に自信が持てれば不安が減るはずです。