世の中、対立を嫌う人がほとんどですが、対立から永遠に逃げる事は出来ないというのが人生の事実です。
自分自身についてや、自分を分かつ境界線、自分が欲しい物を主張しなければならず、これは自分だけでなく人類全体で同じことをしています。
人間同士の摩擦によって、悔しい事や、激しい怒りを感じる事があるでしょう。
悔しさを表現する方法はいくらでもありますが、そういった表現をしても、あなたが実際に望む結果を得る事は出来ません。
スタンフォード大学の慈悲に対する研究を基に、実際に望む結果を得るために、より良い感情を処理する考え方をご紹介します。
怒りの役割
怒りは、直接的であれ間接的であれ受動的であれ、 重要な何かを伝える感情です。
しかし、怒りを表してしまうと人を遠ざけてしまいます。
本当に望んでいるのは、つながりを持ち、話を聞いてもらうことのはずです。
しかし、怒りが関係している場合、その結果が上手くいかないことが多いのです。
攻撃性や感情的な行動は、一般的なコミュニケーションを行う上で最大の障害となります。
これに対して、受動的攻撃行動(パッシブアグレッション)のようなコミュニケーションの方が効果的な場合が多いため、何となく良いと思っている人が多いのですが、一概にそうではありません。
受動的攻撃行動とその対処法については下記にまとめています。
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世界には多様で文化的なコミュニケーションスタイルがあり、ニューヨーカーのように辛辣で無作法なものであったり、フランスのコミュニケーションスタイルのような典型的な受動的攻撃行動だったり、アメリカ南部や中西部の一部のように直接な表現よりも礼儀正しさが評価されるものであったり、地域によってコミュニケーションにおいて重視するものは異なります。
そのため、根本的にはいずれのアプローチも、皆が望む建設的な結果につながるものではありません。
しかし、あなたが怒っている時、それを表現する必要はあります。
攻撃的な行動であろうが受動的な行動であろうが、直接的な表現は相手をあなたから遠ざける原因になるため、代わりに試すべきことがあるのです。
では人間関係を壊さずに怒りを伝える方法を紹介します。
実際に何が起こっているのかを理解し、自己認識する
まずあなたが既に怒りによって発情している場合、別の事を考えて落ち着くのを待ちます。
焦って他人の顔面やメールにイライラをぶつけても、コミュニケーションはうまくいきません。
怒っているとき、私たちの脳は怒りに乗っ取られた状態です。
脳の感情中枢が非常に活発であるとき、論理的に考える事がより困難になる事がわかっています。
怒りの炎を冷却した時こそ、コミュニケーションはより効果的になります。
「意識的に呼吸をする、散歩をする、面白い映画を見て気を紛らわせる、瞑想する、運動する、祈る」あなたが落ち着きを取り戻すために、思考変換を行ったり、運動や呼吸法など役立つものは何でも使い、意識をそらしましょう。
自分の感情を理解する
自分が本当に怒っているかどうかを把握する必要があります。
もしかしたら、ただ悲しんだり、傷ついたりしているだけかもしれません。
多くの場合、他人や状況に不満を感じていると思っていますが、本当の状況は、実際には痛みや悲しみを感じているかも知れないということです。
自分の感情が沸き立つ様な激情であるか確認してみましょう。
あなたの感情が何かを把握したら、それがあなたの本当に伝えたいことです。
責任の所在を見誤っているかどうかを見極める
自分がどう感じているかを状況や人のせいにするのは、あまりにも簡単です。
お腹が空いていたり、疲れていたり、過労であったり、ストレスを感じていたり、結婚生活に不満を感じていたりすると、最初に出会った人や状況のせいにしがちです。
その過程で、愛している人達を遠ざけるような振る舞いをしてしまい、物事をさらに悪化させてしまうのです。
さらに言えば、彼らはあなたの怒りの本当の原因ではなかったので、あなたは更にイライラしてしまい、怒りの納めどころを見つける事が出来なくなります。
自分自身が最初に何に対して怒りを感じていたのか、再度確認してみましょう。
好奇心を持つ
なぜ怒っているのか、なぜ悲しんでいるのか、イライラしているのか、その理由に焦点を当てることで、結果として自分自身に焦点を当て続けることができます。
研究によると、ネガティブな感情は、私たちを自己中心的にさせることがわかっています。
何かを見る時、自分の見方にとらわれているので、他人の見方を考慮する余地が無くなります。
この時おそらく、相手と自分の間で何が起こっているのかさえ考えていないでしょう。
こういった時、非常に有用な感情である「好奇心」を持つ必要があります。
好奇心を持って接すれば、他の人が別の行動原理を基に行動している理由を知りたいはずです。
考えの違いに直面するのではなく、彼らが何をしているのかを真剣な関心を持って尋ねてください。
ほとんどの人は悪意を持って走り回っているわけではありませんが、多くの人は間違いを犯したり、誤って他人を傷つけたり怒らせたりすることがあります。
怒っている人は、故意にあなたを傷つけようとしているわけではありません。
非難する前に、相手を理解するよう心掛けましょう。
思いやりを持つ
相手の視点を受け入れ、「なぜ?」と尋ねることで、最悪の事態を想定するのではなく、真のコミュニケーションを招き入れ、相手の考える権利、感じる権利、行動する権利を尊重し、配慮します。
その結果、コミュニケーションと礼節、思いやり、共感に基づいた理解と、より深い関係を築くことができます。
あなたが攻撃的な態度で相手に近づけば、相手は防御的な気持ちになり、その見返りに怒りを感じて反撃してくるでしょう。
一方で、相手に敬意を持ってアプローチすれば、あなたの意見を聞き、相手の意見を聞いて安心して共有することができます。
上手くコミュニケーションをとる
「私」という主語を使って、自分の気持ちを話すことで、自分の視点を共有しましょう。
しかし、それだけで終わらせてはいけません。そうしないと、自分の視点で自己中心的なままになります。
相手に視点を共有してもらい、真摯に向き合いましょう。
相手の視点に興味を示し、どうすれば妥協点にたどり着けるかを一緒に探りましょう。
繰り返しになりますが、批判的な態度ではなく、好奇心を持ってください。
終わりに
怒りという感情をどう制御していくか6つの方法を紹介しましたが、怒りを理解していくと、そこから不安が生み出される事もあります。
そして、不安の方が怒りよりも不快です。
怒りは不安に対する防御反応であり、少なくとも人としては好ましい反応でもあります。
しかし、怒り自体は程度の差こそあれ社会的に受け入れられないものであるため、インテリジェントな人々は、様々な犠牲を払って攻撃的な怒りの振る舞いや、受動的攻撃行動を避けているのです。
怒った時の表現方法に気を付けながら、適切に対処していきましょう。