新奇性を感じる

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「新しい=面白い」は錯覚?脳科学で読み解く「新奇性バイアス」の正体

なぜ人は、「新しいもの」に惹かれてしまうのでしょうか。

新しいアプリ、新しい動画、新しいトレンド、気づけばつい手を伸ばしてしまう。

しかしその「ワクワク」の正体は、脳がもたらす報酬の錯覚かもしれません。

本記事では、脳科学・心理学の観点から「新しさ」に反応する仕組みを解き明かし、なぜ私たちは飽きやすく、なぜ「新しいのにつまらない」と感じてしまうのかを解説します。

そして最後に、「本当に面白い」を生む3つのヒントを紹介します。

人はなぜ「新しいもの」に惹かれるのか

私たちが「新しいもの」を見たとき、脳の報酬系が活性化します。

とくに側坐核腹側被蓋野と呼ばれる領域がドーパミンを放出し、「ワクワクする」「もっと知りたい」といった感情を引き起こすのです。

脳は進化の過程で、新しい刺激を「生存に有利かもしれない」と判断してきました。

その結果、人類は未知に挑戦し続け、発展してきたのです。

「面白い」と感じる脳の仕組み|「程よい新しさ」が鍵

Bunzeck & Düzel(2006)の研究では、人間が未知の絵や音を見聞きした際、報酬系が強く反応することが確認されました。

さらに2012年の幼児実験では、「完全に予測できる刺激」でも「まったく理解できない刺激」でもなく、 その中間にある「程よい新しさ」に最も好奇心を示すことが分かっています。

この現象は「ゴルディロックス効果」と呼ばれ、人が「ちょうどよい難易度」に快楽を感じる心理を示します。

言い換えれば、「理解できる新しさ」こそが、人が「面白い」と感じる絶妙なポイントなのです。

ゴルディロックス効果とは何か

この効果は「ちょうどいい新しさ」が最も刺激的であることを示す心理現象。

完全に未知なものは理解不能でストレスに感じ、既知すぎるものは退屈に感じる、その間にある曖昧な領域が「好奇心」をくすぐります。

理解できる新しさが最も人を惹きつける理由

「分かるけど少し新しい」という状態では、脳が「予測と現実のギャップ」を処理しようと活性化します。

この働きが「なるほど!」「面白い!」という感情を生むのです。

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錯覚としての「新しさ」新奇性バイアスの罠

しかし、この「新しいものが好き」という傾向が過剰に働くと、 錯覚的な面白さに支配されてしまいます。

これを心理学では「新奇性バイアス(novelty bias)」と呼びます。

「SNSで見たこともないフォーマットの動画」「奇抜なデザイン」「謎めいた造語」

それらを「なんか面白い」「新しい」と感じる瞬間、脳は「中身の価値」よりも「新しさの信号」を報酬として受け取っているのです。

中身より「新しさ」に価値を感じる脳の仕組み

ドーパミンは「報酬の予測」に反応するため、実際に価値があるかどうかより、「新しいかどうか」に先に反応してしまいます。

これが、「内容よりも刺激が重視される」構造を生みます。

バズコンテンツに潜む「新奇性依存」の構造

SNSでは「新しい形式」「奇抜な構成」「強い刺激」が評価されやすいため、制作者も無意識に「新しさ依存」へと傾いていきます。

旧コンテンであるテレビも、あるタイミングからこの系統の制作がされており、オールドメディアが徐々につまらなくなって来た一因にもなっています。

これが過剰になると、「一瞬ウケるがすぐ飽きる」作品が量産されるのです。

脳が「飽きる」瞬間|順応によって失われる面白さ

Schultzらの1997年の研究によると、脳は新しい刺激を繰り返し受けると順応し、ドーパミン反応が減少します。

つまり、新しさの快楽は長続きしないのです。

テレビやSNSでも、「最初は斬新」と感じたものが、数週間後には「もう飽きた」と思われるのはこの仕組みのせいです。

刺激が強くなるほど、脳はより強い刺激を求めるようになり、結果として「過激化」「短命化」が進むのです。

繰り返し刺激で報酬が減る脳の仕組み

最初の数回は強いドーパミン反応が起きますが、同じ刺激が続くと脳が「予測済み」として反応しなくなります。

この「慣れ」こそが、面白さを奪う最大の要因です。

エンタメ・SNSに見る「飽きの加速現象」

トレンドが次々と生まれては消える現代では、「新しさの寿命」が短くなっています。

視聴者の脳が順応しきれないほどのスピードで、次の刺激を探し続ける構造が生まれているのです。

「新しい=面白い」が崩れるメカニズム

ここまで見てきたように、「新奇性バイアス」と「順応」は表裏一体です。

  1. 新奇性が刺激される
  2. ドーパミン反応が起こり「面白い」と感じる
  3. 繰り返しで順応が起き、刺激が薄れる
  4. さらに強い刺激を求めて、新しさを過剰化させる

このループこそが、「新しいのにつまらない」現象の正体です。

新しさを追い求める構造そのものが、「つまらなさ」を生み出しているのです。

本当に面白いコンテンツを生む3つの鍵

脳の錯覚に支配されず、真に「面白い」と感じる体験を作るには、次の3つが重要です。

1. 理解できる新しさを目指す

難解すぎるアイデアは脳が処理しきれません。

「なるほど、そう来たか」と思えるちょうどいい意外性がベストです。

理解できる新しさこそ、持続的な興味を生みます。

2. 感情と結びつける

笑い・驚き・共感など、感情が動くと記憶に残りやすくなります。

情報だけでなく、「どう感じたか」にフォーカスした構成を意識しましょう。 人の気持ちを動かす新しさが、最も長く愛されるのです。

3. 文脈でつなげる

新しいものほど、受け手が理解しやすい文脈づくりが欠かせません。

既知のものやストーリーとの関連性を示すことで、「共感を呼ぶ新奇性」が生まれます。

結論|「新しさ」は錯覚であり希望でもある

人間が「新しいもの」に惹かれるのは、脳の合理的な進化の結果です。

しかし同時に、私たちは「錯覚」に騙されやすい存在でもあります。

コンテンツを作る側も、受け取る側も、この「新奇性の罠」を理解することが、これからの創造の時代に欠かせません。

「新しい=面白い」と思い込むのではなく、「新しさを通じて何を感じ、何を学ぶのか」。

その視点を持てたとき、はじめて本当の意味で「面白い」世界が見えてくるのです。

まとめ

  • 脳は「新しい刺激」に快楽を感じる(報酬系の活性化)
  • 新奇性バイアスにより「錯覚の面白さ」が生まれる
  • 脳は順応するため、新奇性の効果は短命
  • 「理解」「感情」「文脈」が面白さを長持ちさせる鍵

参考文献
Bunzeck & Düzel (2006) Novelty signals in the human brain
Kidd et al. (2012) The Goldilocks effect
Schultz et al. (1997) A neural substrate of prediction and reward

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