夏になると日が暮れるのが遅くなり、その分、夕食の時間も自然と後ろにずれ込みがちです。
筆者も例外ではなく、家族との外食では気づけば夜23時近くに食事を終えることもしばしばありました。
けれど、この生活は睡眠に大きな影響を与えました。
寝床に入ってもなかなか眠れず、やっと眠りについても途中で目が覚めてしまう。体は火照って息苦しく、心地よい休息には程遠いものでした。
いわば「夏の夜の寝不足スパイラル」に陥ってしまったのです。
食事のリズムを整える「16:8メソッド」
この悪循環を断ち切るために取り入れたのが「断続的ファスティング」、通称IF(Intermittent Fasting)です。
1日のうち食事をする時間を8時間に限定し、残りの16時間は断食するという方法で、最も一般的なのが「16:8メソッド」と呼ばれるスタイルです。
筆者は朝9時に食事をスタートし、夕方17時までにすべての食事を終えるサイクルを1か月間続けました。
つまり、日中にしっかり食べて、夜は胃腸を休ませる生活リズムに切り替えたのです。
体験してわかった3つのうれしい変化
1. 夜10時には自然に眠気がやってくる
夕食を早めに終えると、就寝する頃には消化も落ち着き、体がスムーズに休息モードに入れるようになりました。
布団の中で感じていた熱っぽさや動悸も消え、寝付きは格段に良くなりました。
夜中に目覚める回数も減り、朝までぐっすり眠れるようになったのです。
2. 食べるものを選ぶようになった
断食明けの朝は、ナッツやギリシャヨーグルト、果物といった軽くて栄養価の高いものを自然と選ぶようになりました。
日中の食事もできるだけシンプルかつヘルシーに。特に夕方の食事は控えめにし、精製糖や夜遅くのカフェインを避けることで、胃腸への負担が減り、結果的に睡眠の質も上がりました。
「食べ方の工夫」が「眠りの質」に直結することを実感できたのです。
3. 水分の取り方が変わった
断食中は食事からの水分補給が減るため、意識して飲み物を摂るようになりました。
午前中はコーヒーや緑茶でリフレッシュし、午後から夜はカフェインレスのハーブティーや水に切り替えます。
さらに、夜は就寝の3時間前には水分を切り上げ、夜中のトイレで睡眠が妨げられないよう工夫しました。
水分不足は短時間睡眠と関係するとも言われているので、この工夫は眠りを守る大事な一歩でした。
なぜファスティングで眠りが深まるのか?
専門家である管理栄養士のレナ・バコビッチ氏によれば、断続的ファスティングが睡眠を改善する理由は大きく二つあるそうです。
ひとつは「血糖値とホルモンの安定」。
断食を取り入れることでインスリンをはじめとするホルモンの働きが整い、エネルギーのアップダウンが少なくなります。これが夜間の落ち着いた眠りにつながるのです。
もうひとつは「体内時計との調和」。
夕食を早めに済ませることで、自然のリズムに近いサイクルを取り戻しやすくなります。消化器官を休ませる時間をしっかり確保できるため、胃もたれや不快感で眠りが中断されることも防げます。
筆者が体験した「眠りの変化」は、この理論とぴったり一致していたといえるでしょう。
実践のコツは「無理をしないこと」
バコビッチ氏は、断続的ファスティングを取り入れるときのポイントとして、次の3つを挙げています。
- 少しずつ始めること:急に食事の時間を変えると体に負担がかかるため、徐々にシフトしていくのが理想です。自分の体内時計に合わせて調整することも大切です。
- 水分補給を忘れないこと:特に高齢者は脱水リスクが高いため、断食中もこまめに水分を摂ることが重要です。
- 断食外での食事はバランスよく:野菜や果物、良質な脂質やたんぱく質を中心にし、夜遅くの重い食事やカフェイン・アルコールは控えると良い睡眠につながります。
注意すべき人もいる
もちろん、誰にでも向いている方法ではありません。特に以下の人は実践を控えるべきだとされています。
- 糖尿病で血糖コントロールが不安定な人
- 子ども
- 栄養不良や低栄養の人
- 妊娠中・授乳中の女性
- 薬の服用により断食が治療効果や副作用に影響する人
健康状態に応じて無理なく行うことが大切です。
まとめ|食事のタイミングが眠りを変える
筆者の1か月間の体験は、食事の時間を少し工夫するだけで眠りの質が大きく変わることを教えてくれました。
夕食を早めにとることで、消化の負担が減り、血糖値やホルモンが安定し、体内時計も整う。
そこに健康的な食材選びや水分管理を加えれば、より深い眠りが手に入ります。
断続的ファスティングは、単なる食事法ではなく「暮らし全体を整えるリズムづくり」。夏の寝不足に悩む人にとって、新しい解決策になるかもしれません。