「なぜあの人はそんなことを?」と思った瞬間、あなたは二つの道を選ぶことが出来ます。
一つは好奇心という名の探検家になること、もう一つは判断という名の裁判官になることです。
残念ながら、多くの人は無意識のうちに後者を選んでしまいます。
心の中に住む小さな批評家が「もう十分知っている」と囁くように、学びのドアをバタンと閉めてしまうのです。
もし、この扉を開けることが出来たらどうでしょう?人間関係は劇的に変わり、あなた自身も思いもよらない成長に繋がります。
問題は、好奇心が必要な瞬間に限って、それを閉ざしてしまう「犯人」たちが現れることです。
心理学や神経科学の研究では、こうした「好奇心を奪うもの(キラー)」が私たちの心を防御的にし、学びを妨げているとされています。
ここでは、代表的な6つの「好奇心キラー」と、それにどう対処するかをご紹介します。
1.感情のハイジャック
イライラしたり、不安になったり感情が高ぶると、脳の中では「扁桃体(へんとうたい)」が反応して防御モードに入り、好奇心は一瞬で消えてしまいます。
このとき、学んだり考えたりする機能を持つ「前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ)」の働きが弱まり、好奇心や柔らかい思考はシャットダウンされます。
脳は「学び」から「防御」に切り替わり、相手への関心よりも、自分を守る反応が優先されます。
対処法:強い感情を感じたら、「何が起きているのか?」「何を見落としているのか?」と自問しましょう。
感情は消えなくても、この問いかけで脳のスイッチが「防御」から「探索」へ切り替わり、心を開くきっかけになります。
2.スピードと効率のプレッシャー
現代社会では、「早く」「自信をもって答える」が良しとされがちです。
実際は、急いで判断するほど、誤解や思い込みが増えると心理学の研究でも言われています(カーネマン『ファスト&スロー』)。
対処法:何かを決める前に、60秒だけ立ち止まってこう考えてみましょう。
「まだ分かっていないことは何だろう?」「誰も聞いてないことってあるかな?」この短い時間が、深くて広い問いへの入り口になります。
3.集団思考(グループシンク)
まわりが同じ意見だと、「自分だけ違うことを言って大丈夫かな…」と不安になります。
これは、心理学でも知られている「グループシンク」という現象で、集団の空気にのまれて、違う意見が出にくくなる状態です。
しかし、それでは「もしこうだったら?」という発想が消えてしまいます。
対処法:「まだ出ていない視点はある?」「もし反対意見があるとしたら?」意見を否定するのではなく、視点を広げる問いで、多様な考えが出る場をつくりましょう。
4.分かったつもり(知ってる錯覚)
「これは知ってる」「もう理解した」と思ったとたん、それ以上考えるのをやめてしまうことってありますよね。
一度「分かった」と思うと、私たちはもうそれ以上、疑問を持たなくなります。
本当は浅い理解でも、十分だと感じてしまう脳のクセです。
対処法:「この理解、実は一部だけかも?」「他の見方があるとしたら?」と自問することで、自分の考えに余白ができます。
5.気の散り・脳の過負荷
あれもこれも考えながら話すと、脳はどんどん疲れていきます。
マルチタスクが出来ているようで、実際にはタスクを切り替えるたびに集中力が削られています。
対処法:スマホの通知を切り深呼吸を一回します。
「ここから何を学べるだろう?」と問い直すだけでも、脳の「散らかり」が整理されて、問いが生まれやすくなります。
6.「聞くな」という無意識のルール
「質問は失礼」「空気を読め」——そんな無意識のルールを、知らず知らずのうちに心にしまっていませんか?
子どもの頃の体験や文化的な影響で、「余計な事を聞いてはいけない」が当たり前になっていると、自らの好奇心を押し殺してしまいます。
対処法:まずは「暗黙のルール」に気づいて、やさしくこう問いかけてみてください。
「自分が相手だったら、どんな質問をされたら嬉しいかな?」質問は相手を困らせるものではなく、関心やリスペクトの形でもあります。
最後に
好奇心は取り戻せます。
心の中に住む小さな批評家が「もう十分知っている」と囁く瞬間、好奇心が閉ざされ、理解や信頼も遠のいてしまいます。
感情のハイジャック、スピードのプレッシャー、集団思考まで、6つの「好奇心キラー」が私たちの学びのドアをバタンと閉めてしまうのです。
でも安心してください、脳は「防御」から「探索」に切り替えることが出来ます。
重要なのは「何が起きているのか?」「まだ分かっていないことは何だろう?」という自分に対するシンプルな問いかけです。
マルチタスクで疲れた脳も、スマホの通知を切って深呼吸一回で復活できます。
好奇心は取り戻せる宝物なのです。