「お金が倍になるまで、あと何年?」
そんな疑問を一瞬で解決してくれるのが「72の法則(Rule of 72)」です。
投資や貯蓄の世界では、複利の力をどれだけ早く実感できるかが成功の分かれ道。72の法則を知っていれば、どんな利率でも「お金が2倍になるまでの期間」を一瞬で見積もることができます。
この記事では、72の法則の基本から、なぜ「72」なのか、どんな時に使えるのか、そして実際に投資・インフレ対策に応用する方法まで徹底的に解説します。
72の法則とは?
72の法則とは、「お金が複利で運用されたとき、資産が2倍になるまでにかかる年数」を簡単に求めるための近似式です。
計算式はとてもシンプルです。
倍になる期間(年数)= 72 ÷ 年利(%)
例えば、年利6%で運用する場合:
72 ÷ 6 = 12年
つまり、12年で資産が約2倍になることがわかります。
同様に、年利5%なら14.4年(72 ÷ 5)で倍になります。
このように、72を金利で割るだけで直感的に「資産の成長スピード」を掴むことができます。
なぜ「72」なのか?数式と近似の理由
「なぜ72なの?70でもよさそうだけど?」
場合によって「70の法則(Rule of 70)」の法則としても利用されますが、この数字には数学的な根拠があります。
複利の基本式は次の通りです。
2 = (1 + r)t
ここで、rは年利(小数)、tは年数を表します。両辺の自然対数を取ると:
ln(2) = t × ln(1 + r)
よって、t = ln(2) / ln(1 + r)
ln(2) ≒ 0.693なので、実際の式では「69.3の法則」が最も理論に近い形です。
しかし、実務では「72」の方が暗算しやすく、12(1年=12ヶ月)で割り切れることから、金融業界では長年にわたり72が使われてきました。
つまり、72の法則は「現場で使いやすい近似式」として定着したわけです。
実際に計算してみよう|年利別の2倍年数一覧
以下の表は、年利ごとの「資産が2倍になるまでの年数」を示しています。
左が72の法則による近似値、右が実際の複利計算による正確値です。
| 年利(%) | 72の法則 | 実際の複利計算 | 誤差 |
|---|---|---|---|
| 2% | 36年 | 35.0年 | +1.0年 |
| 4% | 18年 | 17.7年 | +0.3年 |
| 6% | 12年 | 11.9年 | +0.1年 |
| 8% | 9年 | 9.0年 | ±0年 |
| 10% | 7.2年 | 7.3年 | -0.1年 |
| 12% | 6年 | 6.1年 | -0.1年 |
このように、金利が4〜12%の範囲では、72の法則は非常に正確です。
複利の力を理解しよう
複利とは、「利子が元本に加わり、さらにその合計に利子がつく」仕組みのことです。
時間が経つほど、元本+利子の合計が大きくなり、資産の増え方が加速度的になります。
単利では増加が一定ですが、複利では「利子が利子を生む」ため、長期的には圧倒的な差になります。
たとえば100万円を年利6%で複利運用した場合、12年後に200万円、24年後には約400万円になります。
これが「時間を味方につける」複利の力です。
応用|インフレ・税金・手数料にも使える72の法則
72の法則は資産運用だけでなく、インフレやコスト管理にも応用できます。
インフレの場合
例えば、インフレ率が3%なら、72 ÷ 3 = 24年。
つまり、24年で物価が2倍=お金の価値が半分になるということです。
税金・手数料を考慮した場合
実際の運用では、税引き後の利回りを使うのが現実的です。
年利6%でも税金20%・手数料0.5%なら、実質利回りは約4.3%。
72 ÷ 4.3 = 約16.7年
つまり、税・コストを考慮すると資産が倍になるまで16〜17年かかる計算になります。
このように、72の法則は「お金の時間的価値」を直感的に把握するのに非常に有効です。
72の法則の限界と正確に使うコツ
72の法則はあくまで「目安」であり、万能ではありません。
実際の経済状況や、他の経済的な要因も考慮する必要があります。
- 金利が非常に低い(1〜2%)または高い(10%超)場合、誤差が大きくなる
- 手数料・税金・複利周期などの条件で結果が変わる
- 変動金利では単純な式が使えない
目安としての利便性は抜群です。
実際の複利計算式(t = ln(2)/ln(1 + r))と比較すれば、どの程度の差があるか確認できるため、「精度の限界を理解して使う」ことが大切です。
72の法則を実生活で活かす3つのステップ
1. 目標を設定する
何年で資産を倍にしたいのか、具体的に決めましょう。
2. 必要な利回りを計算する
例えば10年で倍にしたいなら、72 ÷ 10 = 7.2%。
つまり、年利7.2%の運用を目指せば良いという目安になります。
3. 運用計画に落とし込む
積立NISAやiDeCoなど、複利を活かせる制度を活用しましょう。
少額でも「時間」を味方につければ、資産形成のスピードが劇的に変わります。
まとめ|72の法則は「お金の時間感覚」を鍛えるツール
72の法則は、金融の世界で最もシンプルかつ強力なツールの一つです。
- 「今の金利でどのくらいで倍になるか」
- 「倍にしたい年数に対して、どんな利回りが必要か」
この2つを感覚的に把握できれば、資産運用や家計管理の判断が圧倒的に早くなります。
複利は「早く始める者」に微笑む法則です。
今日から72の法則を活用し、自分のお金が成長するスピードを見える化してみましょう。