日本人は「行列が好き」と言われることが多いですが、海外でも多くの国で人は行列に並ぶ傾向があります。
例えば、アメリカの検証番組で、何もない場所に一人の人が立っているだけで、その後ろに次々と人が並び、自然と行列ができるという不思議な現象が確認されています。
これは「周囲の人が認めているもの=良いもの」と無意識に考えてしまう、人間の心理が影響しているからです。
人間の心理に潜む「認知的ケチ」
例えば飲食店の前に行列が出来ていた時、
「行列ができている」=「多くの人が食べに行っている」=「美味しいお店のはず」
こう考えるのは、人間は皆「ケチ」だからです。
といってもこの「ケチ」とは、お金を出し惜しむという意味のケチとは異なります。
人は、あまり興味のないことや、知識や情報を十分にもっていないことについては、極力少ない労力で判断しようとします。
こうした心理傾向を「認知的ケチ」と言います。(認知的節約家、認知的倹約家などと言われます)
日常の決断疲れ
私たちは毎日、大小問わず、さまざまな選択をしながら生活しています。
その1つ1つについて、自分だけの力で判断するのは非常に大変なことで、選択を行う回数が多いと、人間はストレスを感じ決断疲れを起こします。
そのため、人間は選ぶことの労力を省エネにしたい傾向にあるのです。
おいしいレストランで食事がしたいと思っても、すべてのレストランで試食をするわけにもいきません。
良いカメラが欲しいと思っても、カメラに関する知識がなければ、選ぶのもひと苦労です。
そこで「多くの人の意見」として、行列や口コミサイトを参考にするのです。
同調行動|人はなぜ周囲と合わせるのか?
このように、まわりの多くの人と同じ行動をとることを「同調」と言い、私たちにとって身近な心理で、日常生活のさまざまな場面で見られます。
行列店に行きたくなるのは、多くの人が選んだものはよいものだと思い、同じものを選ぶからです。
まわりと意見を合わせるのも、自分だけ違った意見を言って、孤立することや間違うことを恐れるからです。
同調は集団の中において、個人の意思よりも周りの雰囲気を尊重して行動することです。
単なる表面的な同調もあれば、自分の態度や意志自体まで変化する同調もあります。
行列に並んだ後の心理|コンコルド効果
ちなみに行列店の料理が意外においしくなかった時、「自分には味がわからなかった」と思う人もいるでしょう。
これは「おいしくなかった」ことを認めると、「長時間並んだ」ことと矛盾してしまうため、無意識に感情をコントロールしてしまいます
費やしたコストが無駄になることを避けようとする心理効果を「コンコルド効果(サンクコスト効果)」と言います。