心理学 集中力

集中力の話と集中力を高める方法

2024年12月17日

集中力は生まれ持った資質や能力と思っている人もいるかもしれません。

そういった部分もありますが、誰しも「いつの間にか集中していた」という経験をしたことがあるはずです。

集中力が高い人は、集中力の鍛え方を意識的に実践しているか、あるいは無意識に知っているため集中が持続するのです。

集中力とは

集中力とは、特定のタスクや対象に注意を向け、それを一定時間維持する能力のことです。

この能力は認知機能や環境要因、身体的要素によって影響を受けます。

集中力に関する内容は、神経科学、心理学など異なる分野で内容が少し変わります。

神経科学的な視点:集中力は、脳の前頭葉と後頭葉の間の神経回路に関連しています。これらの領域は、注意の調整と情報の処理に関与しています

心理学的な視点:集中力は、注意の制御と情報の選択に関連しています。集中力が高い人は、外部の刺激に対してより効果的に注意を払うことができます。

集中が途切れてから戻るまで

仕事中や勉強中など作業と関係ないタスクを思いついて、集中力を欠くことはありませんか?

これは本能的な事なので仕方がありません。

カリフォルニア大学アーバイン校の研究によると、別のことに気を取られる時間は0.1秒ほどですが、元に戻るには23分も時間を要します。

他の研究でも、年齢を重ねるにつれてタスク切り替えコストが増加するため、中断は若い労働者よりも経験豊富な労働者に影響を及ぼす可能性が示されています。

集中力を鍛える方法

集中力が高い人に共通する行動原理があります。

  1. 鍛え方を知っている
  2. 実は長時間集中していない
  3. 疲れを習慣でコントロールしている

そもそも集中力は根性で何とかなるようなものではありません。

集中力のある人と無い人の差は、仕組みを知ってか知らずかトレーニングを積んでいるかの違いです

マインドフルネス瞑想

【方法】

内容: 呼吸や体の感覚に注意を向ける瞑想法です。

具体例: 1日10分、静かな場所で座り、自分の呼吸に意識を集中させる。

【効果】

脳の前頭前野(注意制御を司る領域)の活性化が確認されています。

研究によると、マインドフルネス瞑想を8週間続けることで、注意力や感情のコントロール能力が向上したという結果があります。

参考 : Tang, Y. Y., et al. (2015). The neuroscience of mindfulness meditation. Nature Reviews Neuroscience.

ポモドーロ・テクニック

【方法】

内容: 集中作業を25分間行い、その後5分間休憩を取るサイクルを繰り返す。

具体例: タイマーを設定し、決められた時間内だけタスクに没頭する。

【効果】

短時間の集中と定期的な休憩を繰り返すことで、脳が疲労しにくくなることがわかっています。

これは、脳の疲労回復を促す「超回復」のような効果があるためです。

参考 : Cirillo, F. (2006). The Pomodoro Technique.

運動習慣の導入

【方法】

内容: 有酸素運動(ジョギングやウォーキング)を週3回以上行う。

具体例: 朝に20分のウォーキングをする。

【効果】

運動は脳の神経成長因子(BDNF)の分泌を促進し、集中力や記憶力の向上に寄与します。

特に、軽度~中程度の運動後には認知機能が一時的に向上することが示されています。

参考 : Hillman, C. H., et al. (2008). Physical activity and cognitive function in a cross-section of younger and older adults. Health Psychology.

短期間で実践可能なトレーニング

誰しも時間があるわけではありません。

「仕事が行き詰まっているからダイエットが続かない」「家族とギクシャクしていて仕事に集中出来ない」など個々の事情から上記を取り入れるのが難しい場合があります。

以下のように少ない行動から始めて習慣化しましょう。

  1. マインドフルネスを5分から始める
  2. ポモドーロ・テクニックで小さなタスクを分割する
  3. 1日15分のウォーキングを取り入れる

姿勢に気をつけるだけで集中力がアップする?!

姿勢を保つという行為は普段意識しない行動です。

背筋を伸ばした正しい姿勢を取ると、肺が効率的に機能し、酸素が十分に取り込まれます。

酸素は血流を通じて脳に供給され、注意力や認知機能を高める助けになります。

他にも自己肯定感やポジティブな感情を促進したり、脳の前頭前野(集中力や計画性を司る部分)の活動を活性化させる効果があったりします。

集中したい時は、姿勢に気をつけて以下のようなエクササイズで集中力の改善を試みましょう。

  1. 椅子に深く座り、背筋を伸ばす
  2. 5秒間深呼吸をしながら、頭から腰まで一直線を意識する
  3. 作業に戻る前に首や肩を回してリラックスする

参考 : Peper, E., & Lin, I. M. (2012). Posture modifies state and trait anxiety in computer users. Applied Psychophysiology and Biofeedback.

疲れる理由

前頭葉が選択や決断を繰り返すたびに疲労が蓄積することは、筋肉の疲労と似ています。

例えば、「何かをやる」「何かをやらない」「何かを望む」という判断を繰り返すと、前頭葉が過負荷状態になり、集中力や意思決定力が低下するのです。

この現象は「決定疲れ(Decision Fatigue)」と呼ばれています。

決定疲れは保留した決断が増え続けることで悪化する可能性があります。

決断を保留するたびに、その「未解決状態」が頭の片隅に残り続けます。心理学では「ジーニア効果(Zeigarnik Effect)」と呼び、未完了のタスクや決断は脳が気にかけ続けるため、リソースを消耗します。

決断は早めに下した方がいいです。優先順位を予め決めておくなど即決できる仕組みを作りましょう。

意識を向けるべきポイント

脳のリソースを節約するには「習慣化」が重要になります。

習慣化された行動は、自動化されるため、前頭前野(意思決定や集中を司る領域)の負担を軽減します。

その結果、重要なタスクに集中するための認知リソースを節約できます。

顕著な例は、毎朝同じ服を着る習慣(制服化)があると、「今日は何を着るか?」と迷う必要がなくなり、脳が疲れにくくなります。

カリフォルニア大学の研究では、意思決定を習慣化で減らすと、注意力や集中力が向上することが示されています

まとめ

集中力は生まれつきのものではなく、適切な方法とトレーニングによって誰もが改善できるスキルです。

マインドフルネス瞑想、ポモドーロ・テクニック、運動習慣、正しい姿勢などの科学的アプローチを意識的に実践することで、脳の認知機能を最適化し、より効果的に集中できるようになります。

決断の習慣化と早期決定により、脳のリソースを節約し、持続的な集中力を高めることが出来るでしょう。

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